記事によると、SNS上には「おやじの代わりに投票できました」といった投稿が見られ、他人になりすまして投票する「詐偽投票」への不安が広がっている一方で、多くの投票所では依然として身分証の提示を求めていない。
名古屋市中区の期日前投票所では、「選挙のお知らせ」を忘れた有権者が「身分証はいらないですか」と尋ねると職員が「いりません」と答え、宣誓書の記入だけで投票が可能だったというケースが紹介されている。
公職選挙法は詐偽投票に対して「拘禁刑2年以下または罰金30万円以下」という罰則を定めており、2025年参院選では全国で24人が詐偽投票で検挙されている。名古屋市でも2人が書類送検され、そのうち1人は「身分証なしで投票できる」と紹介するSNS投稿を見ていたとされる。
名古屋市選管は今回の衆院選から投票所に「詐偽投票は違法行為」と訴える張り紙を初めて掲示したものの、本人確認のための身分証提示は求めていない。混雑による投票意欲低下や、身分証・マイナンバーカードを持たない人への配慮を理由に、「投票しやすい状況を守ることも必要」と説明している。
これに対し、富山市選管は従来から、投票所入場券を持参しない有権者には原則として身分証提示を求める運用を行っており、混雑時に待ってもらうことがあっても「目の前の人が本人か厳格に確かめる必要がある」として、公正性を優先する立場を取っている。
選挙制度に詳しい河村和徳・拓殖大学教授は、選管が身分証の持参を求めるだけでも一定の抑止効果があると指摘し、今後は顔認証など生体認証技術の活用も視野に入れるべきだとの見解を示している。
この記事が浮き彫りにしているのは、「投票しやすさ」を理由に本人確認をほとんど行わない自治体と、「なりすまし防止」を重視して身分証確認を徹底する自治体の間で、公正と利便性のバランスの取り方が大きく割れている現状である。
詐偽投票には刑罰が規定されているにもかかわらず、現場では宣誓書の記入だけで投票できてしまう運用が広く残っており、SNSでそれが共有されることで「本当に本人確認していないのか」「制度として甘すぎるのではないか」という不信感を増幅させている。
公正な選挙を求める立場からは、
少なくとも「入場券を持たない有権者には身分証提示を原則とする」
宣誓書の虚偽記載がどのような責任を伴うのかを明示する
詐偽投票の検挙事例や罰則を、投票所でわかりやすく周知する
といった最低限のルールを全国的な標準として整備し、「投票しやすさ」と「なりすまし防止」を両立させる仕組みが必要だと言える。
将来的には、河村教授が示唆するように、生体認証やICカードなどを本人確認に組み込むかどうかを含め、技術とプライバシー保護の両面から本格的な議論が不可欠になっている。
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なりすまし投票への警戒と本人確認の甘さ―自治体で割れる対応出典:目の前の有権者、ほんとうに「本人」ですか? 「なりすまし投票」に警戒、選管で対応に温度差 (元記事・資料を見る)