何が起きた事件だったのか
フジテレビ(FNN)と産経新聞は、長年合同の電話世論調査を実施し、内閣支持率や政党支持率を毎月のように報じてきました。

ところが、2019年5月〜2020年5月に実施された計14回の合同世論調査で、委託先企業から再委託されたコールセンターの担当者が、実際には電話していないにもかかわらず「架空の回答」を入力していたことが発覚しました。

1回あたり約1000件のサンプルのうち百数十件が不正で、14回分の合計は当初発表で約2500サンプル、その後の精査で1886サンプル(全サンプルの12.9%)とされています。

両社はこの期間の調査結果に基づく番組・記事をすべて取り消し、視聴者・読者に謝罪し、一定期間世論調査を中止しました。

不正の構図と動機
不正は、フジテレビ・産経から委託を受けた調査会社が、契約に反して別会社に再委託し、その再委託先の現場責任者が行っていました。

この担当者は、「電話オペレーターの確保が難しかった」「利益を上げるために架空データを入力した」と動機を説明していると報じられています。

形式としては「外部業者の不正」という形ですが、BPO(放送倫理・番組向上機構)は、放送局側のチェック体制の甘さを「重大な倫理違反」と断じ、社内管理と検証プロセスの欠如を厳しく批判しました。

公正な選挙と世論調査が持つ重み
世論調査の内閣支持率や政党支持率は、

選挙直前の「情勢報道」の根拠となり

有権者の心理(勝ち馬に乗りたい/劣勢を挽回したい等)に影響し

政党や候補者の戦略判断(どこに資源を注ぐか)にも強く関わります。

その基礎データの一部が「電話していないのに埋められた数字」だったという事実は、

選挙報道の前提となる「世論」の描き方

メディアが自ら掲げる「世論調査の重要性」
を根本から揺るがすものです。

公正な選挙の観点から見ると、

世論調査が誤った「空気」を作り出せば、投票行動そのものに影響する

本来、権力を監視すべきメディアが、自らの調査の品質管理を怠れば、「権力+メディア」が一体となって誤った認識を社会に広げかねない

という重大な危険があります。

おわりに
フジテレビ・産経新聞の合同世論調査不正事件は、「世論調査もまた、選挙の公正さを支える重要な“インフラ”である」という事実を思い出させる出来事でした。
公正な選挙を求めるなら、投票箱や開票機だけでなく、「世論」を測る物差しそのものが、どのような仕組みとチェックの上に成り立っているのかを、私たち市民の側から問い続ける必要があります。