社会学系の解説では、選挙報道が有権者の投票行動に与える影響を説明する概念として、アナウンスメント効果、バンドワゴン効果、アンダードッグ効果、沈黙の螺旋などがまとめて紹介されている。
アナウンスメント効果は、世論調査や情勢報道の結果が「発表されること自体」によって、その後の有権者の行動が変化してしまう現象を指し、その一形態として「優勢と報じられた側に票が集まるバンドワゴン効果」と「劣勢と報じられた側に同情票などが集まるアンダードッグ効果」が区別されている。
また、「沈黙の螺旋」のように、メディアが示す“主流の意見”から外れたと感じた人が、自分の意見を言いにくくなり、結果としてますます一方向の言論が強まっていく過程も、選挙とメディアの関係を理解するうえで重要な心理メカニズムとして説明されている。
このような効果が存在することを踏まえると、「情勢調査」や「〇〇優勢」「大接戦」といった報道は、単なる情報提供ではなく、投票行動そのものを変えてしまう「介入」に近い性格を持つことになる。
とくに、大手マスメディアが繰り返し「どこが優勢か」「誰が勝ちそうか」を報じることは、勝ち馬に乗ろうとする心理や、少数派であることを黙らせる圧力を通じて、選挙結果をゆがめる方向に働きかねない。
公正な選挙を考えるうえでは、こうした心理効果を前提に、「どの範囲まで情勢報道を許容すべきか」「人気投票的な報道をどこまで規制すべきか」を、法制度とメディア倫理の両面から議論し直す必要がある。メディアが自らの影響力を自覚し、選挙報道に対してより厳格な自己規制と説明責任を果たすことが求められている。
記事一覧
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メディア報道が選挙をゆがめる?―アナウンスメント効果・バンドワゴン効果など出典:選挙にメディア/マスコミが与える影響を社会学概念から学ぶ-アナウンスメント効果・アンダードッグ効果・バンドワゴン効果・沈黙の螺旋など- (元記事・資料を見る)
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公選法138条の3「人気投票公表の禁止」―テレビ・新聞の情勢調査は本当に許されるのか公職選挙法第百三十八条の三は、次のように定めている。
第百三十八条の三 何人も、選挙に関し、公職に就くべき者(衆議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数、参議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数若しくは公職に就くべき順位)を予想する人気投票の経過又は結果を公表してはならない。
この条文は、「何人も」と明記して、特定の候補者や政党などが「どれくらい支持されているか」を予想する人気投票の経過や結果を公表することを、選挙に関して一律に禁止している。
対象は個人に限らず、政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者、その数、さらには比例代表における当選順位の予想まで含んでおり、本来であれば、選挙の「勝ち負け」を事前に予想して数値化し、公表する行為は厳しく制限されているはずの規定である。
ここで問題になるのは、「何人も」と書かれているにもかかわらず、テレビ局や大手新聞社、週刊誌などが日常的に行っている「情勢調査」や「当落予測」が、この人気投票の禁止とどのように整合するのか、という点である。
世論調査や情勢報道という名目で、候補者ごとの支持率や「当選圏」「ややリード」「横一線」といった予想を選挙期間中に繰り返し報じる行為は、実質的に「公職に就くべき者を予想する人気投票の結果の公表」に当たるのではないか、という疑問は拭えない。
有権者の判断を左右しかねない影響力を持つメディアだけが、事実上この禁止規定の外側にいるかのような現状は、「何人も」という立法趣旨と矛盾して見える。
公正な選挙を本気で実現しようとするなら、一般有権者に対してだけでなく、大手メディアや世論調査会社を含めた全ての主体に、この条文がどう適用されるべきかを改めて問い直し、人気投票型の情勢報道の是非を正面から議論する必要がある。出典:公職選挙法 (元記事・資料を見る)